元記事:Blender - Survey 2025 Results
昨年10月に行われました Blender Survey 2025の結果が公開されています。非常に長いため、筆者の独断と偏見により抜粋して解説していきたいと思います。
同様に本記事の図表は、元記事のインタラクティブな図表の抜粋や切り抜きの画像になっています。完全な図や関連性モード(Connections)の利用、統計データがダウンロードは元記事を参照してください。
まずは、Blender を友人や同僚に勧めるか? ここではその結果を、NPS(Net Promoter Score: 顧客満足度)という指標で表現しています。
NPS は三種類に分けられ、
集計では85.6%が最後の「促進者」で、82.5%のユーザーが満足していると答えています。ただ以前も書きましたが、満足していないのにわざわざ登録までしてアンケートに答える人はそんなに多くはないと思われるので、実際にはもっと減るものと推測されます。
少し飛ばしてユーザー年齢の分布。26-35歳が26.9%最も多く、次に19-25歳、36-45歳と続きます。18才以下は11.26%と、前回に比べて減っており、少子化や AI の影響があるのかもしれません。
国別の分布では、米国が15.97%とダントツの1位で、ドイツが7.26%と2位に浮上。そして中国が5.61%、インドが5.46%と続きます。日本は前回同様19位(1.21%、回答者57名)でした。
なお地域別ではヨーロッパが首位(41.73%)で、アジアが26.74%、北アメリカが21.43%です。
さらに少し飛ばしてユーザーの自己紹介。アーティストが33%で1位、デザイナーが17.27%、開発者が11.59%、そしてコンテンツ制作者、生徒と続きます。
最初に利用した 3D ソフトウェアは、Blender が54.07%、それ以外が45.93%と割と拮抗気味です。
Blender 以外の内訳(右図)は、3ds Max が27.43%と最も多く、次は Maya の13.47%、Cinema 4D の13.14%、そしてここでフリーの SketchUp の7.37%が入ります。
最初の Blender バージョンは、2.8x が最多で21.36%、次に2.49以前 (20.40%)、2.7x (16.60%)と続きます。
ダウンロード元は Blender.org が最多で66.88%。Steam が9.77%、テストビルドを配布している builder.blender.org は9.29%。
Steam は勝手に更新してくれるのが便利なんですけどね。
ニュースソースは「YouTube」が25.15%と最多なのは予想通り。「blender.org」が22.02%と次に来るのは devtalk.blender.orgで Weekly Update(ウィークリー)があるからでしょうか。
そして「ニュースサイト」(10.27%)、「コミュニティフォーラム」(8.26%) の次に「X」(7.05%) が続きますが、その前の二つの中に入っているはずの「Blender Artists」や「Reddit)」が区分されておらず、実体はよくわかりません。
問題の解決方法は「オンライン検索」が最多の37.43%、「マニュアルを探す」は20.70%の二つの順は変わりませんが、今回は「AI に訊く」が15.78%と、2024年より一気に上がり、「コミュニティで訊く」(14.38%) が下になっています。
日本のように母国語が英語以外のユーザーにとっては、英語のページを検索するより母国語で訊ける AI の方が便利なため、来年に首位になっている可能性もあります。
Blender を使用する頻度は、毎日が過半数(52.91%)を占めており、前回に比べて増加しています。毎週の人(30.24%)も増えています。
Blender を使用する動機は「フリーであること」が一番多く、そして「使って楽しいこと」「オープンソースであること」の三つが大半を占めます。
利用バージョンは「4.x」が70.61%と一番多く、次いで「5.x」の22.60%の二つでほぼ占められています。当然ながらリリースサイクルに左右されます。
LTS の利用者は半々。エクステンションプラットフォームからのデータによると、恐らく長期プロジェクトのためか、数年間一つの LTS を使用している人達がいるそうです。
一方、実験的ビルドの利用はどうかというと、56.79%の人が「利用していない」という結果に。実際、リリース前よりリリース後にバグ報告が増えるのを見ると、割と保守的な人が多いように思います。
ではBlender の用途について見てみましょう。
モデリングと3Dアニメーションが共に11%弱で最も多いのですが、各設問で重なる領域も多いです (例えば「Character Art」にはモデリングとリギングが含まれることが予想されるなど)。元記事でも、多くのユーザーは複数の用途に使用していると分析しています。
何の仕事に使用しているか。「グラフィックデザイン」が11.91%と最も多く、以降は「ゲーム開発」「プロダクトデザイン」「映画/TV」「広告」「VFX」となります。
元記事には2025年から追加された設問とありますが、実は前回にも同じ設問はありました。前回は「映画&アニメーション」が首位だったのですが、今回はあいまいすぎるため、「Game Cinematics」や「Music Videos」といった、もっと具体的な項目が追加され、上記のような結果になったものと思われます。
チームの規模は個人が72.62%と大半を占め、二人から五人の小チームが16.12%とのこと。
併用するソフトウェア。Others にある分も含め、用途別に雑に見ていきます。
ペイント:「Adobe Photoshop」が10.20%で最多、フリーウェアの「Krita」(5.46%)、「GIMP」(4.23%)、一時期話題になった「Affinity」は3.78%の名前も挙がっており、今後増える可能性があります。
また「Clip Studio Paint」(1.09%) で漫画制作に使用している方もいるようです。
動画編集/VFX: フリーの「Davinci Resolve」が一番多くて8.38%、後は「Adobe After Effects」(5.91%)、「Adobe Premiere」(2.55%)、「EmberGen」(1.52%)。
ゲームエンジン:「Unreal」(6.36%) が「Unity」(3.76%) や「Godot」(3.63%) を大きく引き離しています。
3DCG: 「Adobe Substance」が6.89%、「ZBrush」が2.92%、「Houdini」が2.38%、「Marvelous Designer」(衣服作成ツール) が1.79%、「Autodesk Maya」は1.56%。後述の要望に多かった「テクスチャペイント」「スカルプト」「物理演算」機能の補助として使用されているようです。
また、Blender がフリーのオープンソースだからといって、併用されるソフトウェアも必ずしもそうだとは限らないのがわかります。
まず Blender のワークフローで AI ツールを使用している人は2025年の時点で興味のある人も含めて60%。
どのタイプの AI を使用しているかは、「コーディング用 LLM」が22.81%と最も多く、「画像生成」(19.92%)、「画質の向上」(13.77%)、「3Dモデル生成」(13.57%)、「テクスチャ生成」(12.37%)といった感じ。
用途については、「スクリプト・自動化」が22.63%、「コンセプトアート生成」が21.71%、「モデリング用参照画像」が15.67%と割と間接的な使用に留まっており、「テクスチャ生成」(13.86%) や「背景の生成」(10.03%) のようなアセット生成にもあまり使用されていないようです。
元記事も「Money」だったので気にせず直球のタイトルで。
Blender で収入を得ているか? 半数弱(49.7%)が YES と答えています。これは前回と比べ5%増えているとのこと。
ユーザーの Blender 関連のカテゴリ別の消費額では「学習」は Web や Youtube に豊富にあるチュートリアルを無料で利用し、「アセット」や「ソフトウェア」「アドオン」を購入している人が多いという予想通りの結果に。
Blender への貢献方法。「寄付」(Donation)が40.20%と最も多く、「バグ報告」(Bug Report)の29.69%が続きます。ちなみに Blender Studio のサブスクリプションや、アドオン購入による Blender Foundation への間接的な寄付、宣伝やチュートリアル・ドキュメント作成は「Other」に入っているようです。
Blender への寄付しているか。35.89%が Yes と答えており、余裕がないため No と答えている人が42.83%とのこと。
寄付をした方法については「単発」(Donated Once) の寄付が37.60%、「開発者ファンド」(Development Fund)による継続的な寄付が34.83%、そして「商品支払いによる間接的な寄付」(Market Places)が20.18%となっています。
寄付額については10ユーロ以上100ユーロ未満が一番多く (52.86%)、10ユーロ未満の人を含め、大半が100ユーロ未満という結果に。
ようやく来ました開発へのフィードバック。ここからが本番です。
満足度は、「方向性」(Development Direction) が若干不満があるものの、「開発ペース」(Development Pace)、「チーム」(Development Team)、「コミュニケーション」(Communication) のすべてにおいてほぼ良好です。
フォーカスして欲しい領域。「アニメーション」が10.16%と最も多く、「Cycles」(9.52%)、「モデリング」(8.66%)、「テクスチャペイント」(8.41%)、「物理演算」(8.29%)、「ジオメトリノード」(8.25%)、「EEVEE」(6.04%)、「バグ修正・安定化」(5.52%)と続きます。
フォーカスして欲しいプロジェクトでは「テクスチャツール」(Texturing Tools)が最も多く、「アニメーションとリギング」(Animation & Rigging)、「複雑なシーンの対応」(Complex Scene Support)、「ノンフォトリアルレンダリング」(Stylized Rendering)、「タッチデバイス」(Touch Devices)、「ベイキングツール」(Baking Tools)、「インタラクティブモード」(Interactive Mode)、USD、「色管理」(Color Management)、「NURBS モデリングツール」(NURBS modeling tools)…と並びます。
「オンラインアセット」(Online Assets) にあまり票が入らなかったのはもうすでに Blend Swap や Superhive、Poly Haven、Blender Kit があるからでしょうか。
フォーカスして欲しい研究。「レンダリング」(Rendering) が最多で29.4%、以下「画像解析」(Computer Vision) が20.36%、「機械学習と AI」(Machine Learning & AI) が16.57%、「Blender Apps」が12.31%、「バーチャル制作」(Virtual Production) が10.06%、「オンラインコラボレーション」(Online Collaboration) が9.55%です。
Blender App(カスタマイズした Blender によるアプリ作成) が期待を集めているのが意外でした (失礼)。
下記はフィードバックの項の翻訳です (ローカル LLM による翻訳後、筆者が校正・編集)。元記事も AI でまとめた感じなのでちょうどいいのかもしれません。(何が?)
ここはユーザーの Blender 開発についての意見のまとめです。フィードバックから集められた最も一般的なテーマと感情を、肯定、中立、否定のカテゴリでまとめています。
このカテゴリのユーザーは、このソフトウェアの現在の状態と開発チームに対して感謝、興奮、満足感を示しています。
全面的な感謝: ソフトウェアが無料かつオープンソースであることに対する圧倒的感謝。多くのコメントで「本当に素晴らしい」「最高の3Dソフトウェア」「私の人生を変えてくれてありがとう」といった言葉が見られました。
開発速度: 機能実装の速さに感銘を受けたユーザーが複数います(例:「過去3〜4年間の開発速度に驚きました」)。
ジオメトリノード: ジオメトリノードのパワーと将来のツール構築の基盤としての可能性についてかなりの称賛があります。
高い評価を得ています。
コミュニティと透明性: オープンなコミュニケーション、"Blender Today" ストリーム、そして家族の一員であると感じられることを高く評価しています。
特定の機能について:
このカテゴリには、機能の要望、複雑な感情、改善の提案、そして学習中のユーザーからのコメントなどがあります。
特定の機能についての要望:
ワークフロー統合: Unreal Engine、Unity、After Effects との連携の改善の要望があります。
ジオメトリノード (「難易度が高い」要因): 賞賛されている一方で、多数の「中立」コメントには、ジオメトリノードはアーティストにとって数学的/複雑すぎるため、すべてを「プログラミング」する必要のない、既製のツールやモディファイアを望む意見があります。
学習曲線: 初心者は UI が威圧的だと感じており、より良いオンボーディングや公式の体系化されたチュートリアルを求めています。
ビデオシーケンサー (VSE): VSE を商用ツールの代替手段となるべく、より堅牢に、そしてパフォーマンスとオーディオツールを改善することを望むユーザーが多くいます。
このカテゴリのユーザーは、特定のモジュール、バグ、開発の優先順位、リグレッションについての不満を表明しています。
テクスチャペイントとベイク (大きな問題点): 最も頻繁に言及される具体的な不満です。ユーザーはこのモジュールが放棄されており、時代遅れで、レイヤーシステムが不足していると感じています(業界標準のソリューションに張り合うのに不可欠なレイヤーは常にリクエストされています)。
スカルプト: ハイポリ数でのパフォーマンスが、最も人気のある3Dスカルプトツールとその「スカルプトレイヤー」に比べて遅れていること、そして Multiresolution(マルチレゾリューション)モディファイアーのバグが長期間無視されているという不満があります。
UI/UX とキーマップ:
開発ペースと安定性:
EEVEE Next: 従来の EEVEE エンジンに比べ、パフォーマンスや影の品質の退化、スタイル化/NPR 機能が失われたことに対する具体的な不満があります。
人工知能 (AI): 生成 AI(LLM/画像生成)の統合に強く反対するユーザー層が存在し、非倫理的または環境破壊と見なしています (一方で、AI ツールを希望するユーザーもいますが、AI に反対する声の方が圧倒的に大きいです)。
リギングとアニメーション: 他の DCC から移行してきたユーザーは、リギングシステムが時代遅れであると感じています。特に NLA エディターや、堅牢なポーズライブラリまたはアニメーションレイヤーがない点が挙げられています (まもなく改善されることは認識していますが)。
Blender 5.x/4.x へのフィードバックは、ツールが存在することに対する深い感謝と、その進化に対する具体的な不満という、相反する意見に分かれています。
放置されているモジュール:
テクスチャペイントとスカルプトが放置されているという共通認識があります。レイヤーベースのペイントシステムと、ハイポリスカルプトでのパフォーマンス改善が求められています。ネイティブの欠点を補うために有償アドオンに頼らざるを得ないことが、共通の不満となっています。
強力だがアクセスしづらいジオメトリノード:
ジオメトリノードの能力は認められていますが、「アーティストフレンドリー」なラッパーへの強い需要があります。ユーザーは、数学やプログラミングをせずにジオメトリノードの結果を得たいと考えています。
AI の対立:
コミュニティでは意見が分かれているものの、慎重な傾向にあり、Blender は「人間によるアートに集中」し、生成 AI を避けるべきだという強い主張があります。その一方、退屈な作業(リトポロジーや UV 展開)を手伝う AI アシスタントを希望するグループも少ないながらも存在します。
業界標準 vs. Blender 作法:
プロは、USD、MaterialX、Unreal Engine、CAD フォーマットなど、業界のパイプラインとの統合の改善を求めており、キーマップや選択の挙動などの、業界標準の UI/UX の慣例を無視した、独特で、時には直感に反する「Blender 作法」を優先する点に不満を感じています。
パフォーマンスと安定性:
EEVEE Next のリグレッションと、最近の LTS リリースの全体的な不安定さが頻繁に報告されています。ハイエンドハードウェアのユーザーは、大規模なシーンにおける最適化の問題によって制限があると感じています。macOS/Linux ユーザーは、Metal/Vulkan などの API サポートに関する特定のニッチな不満を抱いています。
総括:
ユーザーベースは非常に熱心で情熱的ですが、新機能の開発のスローダウンと、既存ツール、特にテクスチャ、スカルプト、物理演算などの洗練により、Blender を真の完全なパイプラインツールにすることを開発者に求めています。
注記: このまとめには一般的な感情で分類したものですが、大抵の場合、個々のフィードバックには肯定的な点、否定的な点、中立的な点が混在しています。
フィードバックを見ると、昨年末にリリースされた5.0に「中立」の意見のいくつかが取り入れられていることがわかります(いくつかのジオメトリノードなど)。
去年に Ton 氏が引退し、新しい体制になった Blender Foundation ですが、これからの動向に目が離せませんね。